コトバのコトバ

ボクキキⅩソフィア編2:二人はちがう。

電車に乗って、浅草へ行った。
こういうジャパニーズなところって、ガイジンなら喜んでくれるんじゃないかなあ、って浅い考え(浅草だけに。うひゃひゃひゃひゃひゃはやはやgsdb)。
でもでも、ソフィアは大喜び。世の中、思うほど深くない。

おみやげ屋さんで、お姫様のカツラや、殿様のチョンマゲをかぶってみたり、屋台で、りんご飴食べたり、輪投げして自由の女神像ゲットしたり(これはあまり喜んでなかった)、もう子供のような大騒ぎ。

いちばん喜んだのが、浮世絵のポストカード。子供のころから憧れていた、らしい。
ソフィア、なにやら、お店のおじさんにこちょこちょ耳打ちすると、おじさん、奥から小箱を持ってきた。それを開けると、うひぁー、「強烈ノーカット浮世絵鼻血ブー」。
これ、憧れ?子供のころから。。。

おじさんに、なんて言ったの?とソフィアに聞くと、「オッちゃん、キツイやつたのむデ」と言ったらしい。「ガイドブックに書いてアル」そうな。こういうところはナイス、憎いぜガイドブック。

ソフィアは、おじさんの手から、浮世絵(ノーカット)を奪い取って、浮世絵(ノーカット)の、スイートスポットを指差しながら、というよりグリグリしながら、「ココ、ココ、ハイッテマス、ハイッテマス、ハヒッテマフ」声も裏返って、ぼくのピエールを「ウタマルウタマル(あのね、一文字ちがうよ)」って握りしめている。

通りがかった観光客が、どえりゃーおもろいもん見つけたやんけ、とばかりに、写メ撮られたりして、ソフィア、ちょっとした東京珍名所。
そんなことまったく意に介さずに、おみやげ屋さんのおじさんに、ソフィアさらに耳打ち。
おじさんまた別の箱を、奥から取り出してきた。
彼女に「こんどはなんて言ったの?」と聞いたら、「モアキツイやつたのむデ?」
わかってます、それもガイドブックに書いてあるんでしょ。
ソフィアの国の人に、日本はどんな国だと、思われているんだろ?ヨーグルトラーメン、ノーカット浮世絵、ウタマル・・・。

それはおいといて、箱のふたを開けると、「絶倫四十八手カルタ鼻血ブーパート2」!って、
!をつけたわりに、ぼくも3/48くらいしか体位の名称も知りません。
ところが、ソフィアは、四十八手一手一手を手にとって、なめまわすように見ながら、というよりなめまわしながら、

「鳴門後ろどり、アハーン、コレ前からやってみたかったノ。でもこのポージングは、身長の低いニホン人じゃないとできないのよネ、」
はあ、そうなんですか。

「燕返し、ウフーン、このポーズすることを考えただけで、もうワタシもうワタシもう」はあ、そうなんですか。

「四十八手はモノノケだと、ワタシ思いマス。カタチとワザがつくりあげる、精神性の美学デス」
※モノノケ→モノノフ(武士のこと)

「ヒトミは、何手くらいイタシましたか?」
「0かなあ、いつも、上に乗るか乗られるかばかりだから」

「オーーーーもったいなーいデース。このセックスの奥深さこそ、日本が誇る文化デス!」
文化ねえ。よく聞いてみると、彼女が大学で専攻しているのは、日本は日本だけど、日本のセックス。

「学問のジャンルでいうと、比較文化みたいなものデス」と、ソフィア語る。
「ニホン人は古来、スバラシイ性文化をつくってきたのに、現代社会はソレを悪いものであるかのように、封印してイマス。ソレはマチガイです」と言う。

「快楽をバカにしては、イケマセン。キモチイイことはイケナイことという発想は、ムセイしていマス」
※ムセイ→ムジュン

「次世代をつくるのは、子供たちデス。子供をつくるのは、セックスデス。世の中は、激しくセックスすることを前提に成り立ってイマス」
なるほど。激しいかどうかは別にして、だけど。

「つまり、快楽が未来をつくりマス」
フムフム。

「ムカシのニホンは、そのことをわかってイマシタ。ニホン中に、エッチなお祭り、たくさんありマス。浮世絵には、性と芸術のユウゴウが実現してイマス。まさしくコレは、聖と生と性の3Pヤァ」
フムフム。いちいちボケてくれなくていいけど。

「ところが、イマの日本はそうじゃありマセン。快楽を、みんなハァハァ好きなのに、ウラヘウラヘと隠そうとしマス」
フムフムフムフム。

「だから、少子化なのデス」
唐突な結論。でも妙な説得力。

「日本のセックスと、キミの国のセックスと、どこがどう違うの?」
「たとえば、シテいる最中、ワタシたちは、男も声を出しマス。ウオーーーン、って」
それはなんとなくわかる。→ぼくもでるから、あ~う~、って。ちょっとだけ。

「日本の女の人、感じると、アアアァー、って息を吐くデショ?」
うん。

「ワタシたちは、ハゥウハゥウハゥウ、って息を吸うの、知っテタ?」
知らなかった。

「ワタシの国でいちばんモテるのは牛乳屋さんで、毎朝配達中に、奥さんたちとヤッちゃうの、知っテタ?」
知らなかった。

「ミルクバー、って呼ぶノ」
へえ。

「ワタシの国のバイブは、モッツアレラチーズで出来ているの、知っテタ?」
知らなかった。

「ワタシの国の新婚家庭では、朝のトーストにバターなんか塗らないで、おたがいのアソコの・・・アーんもうこれ以上言わさないデェ、って知っテタ?」
、、、知らなかった。

「では、コレまでで、ホントウの話はどれでショウ?」
クイズかよ!

「間違いがひとつありマース」
ひとつだけかよ!

「でもね、違ってあたりまえ。オナニじゃ、ツマラナイ」
※オナニ→オナジ

「そうかなあ、違いばかり目立つと、さみしいんじゃないかなあ」って、ぼくの少数意見(すでに負け犬)を無視するように、
「ワタシ、すこしのあいだ、ニホンのオトコのヒトと、お付きあいシテタ。ニューヨークに留学していたコロ、相手も留学生だったノ。とてもやさしいヒト、そして、とてもつまらないヒトだった」
どういうこと?

「なんでもワタシを優先してクレテ」
それダメなの?

「いつもキレイだよって言ってクレテ」
それダメなの?アゲイン。

「セックスのトキだって、大声出すシ」
ぼくもちょっと、出ます。さっきも、言いましたが。

「ワタシはニホン人のオトコと付きあい始めたハズ、でも途中から、カレがダレだかわからなくなっちゃッタ」
よくわからないけど。なんかわかるけど。

「それじゃ、それまでにワタシが付きあってきた、やさしいオトコたちと変わらナイし。セックスもタンパクだっタし」
それじゃないの?原因。

「ウタマルも小さかっタし」
それじゃないの?原因。アゲイン。

「ムリしてあわせなくていいノ。違うことが、タイセツなノ。違うカラ、興味を持てるノ。違いを理解しあうことカラ、愛は生まれるノ」
愛、か。ぼくには、まだわからない。

ぼくが小さなため息をつくと、ソフィアは、
「ヒトミは、ソフィアってぼくと違うなあって、今日ずっと思ってたデショ?」
あ、気づいてたんだ。

「ジブンとの違いを確かめて、納得しているダケ」
ちょっと、さみしそうな顔。

あれぇ、
「さっきぼくが、違いが目立つとさみしいよね、って言ったら、違ってあたりまえって、言ったじゃん。いまだって、ソフィアは違うことがタイセツだって、言ったじゃん。それとこれと、どうなの?」
久々の、反論。でも、声小さめ。

「オナニじゃない!ヒトミは、ちがうってことが、結論。フムフム、そうかやっぱりちがうんだな、って。ワタシは、ちがうってことが、スタート」
ぼくは黙った。続きを聞きたかった。

「ヒトミが、ジブンとワタシと違うなあ、って思うのは、そのとおりなの。ヒトミはヒトミ、ソフィアはソフィア。それは、あたりまえのこと。ヒトミもタイセツ。ワタシもタイセツ。だから、おたがいの違いを、リスペクトするところから、始めたい。OK?」
OKだよ。

「でも、ワタシタチ、ぜんぜん違うけど、たくさん、オナニ」
どういうこと?

「ヒトミ、さっき、困ってるワタシ助けてくれたヨネ?ダレだって、困ってるヒトは、助ける。オナカすいたら、なんか食べるヨネ?ヒトミも、飼っているイヌが死ぬと、泣くデショ?」
ほんとだ、オナニだ、じゃなくて、おなじだ。

「ヒトはみんな違う。だからこそ、わかりあいタイ。オナニだと思ったけど、やっぱり違う、で終ったら、いちばんサミシイよ」
そうだね。わかった。ありがとう。

教訓⑩「人は違う。だからわかりあいたい」

「もし、モッツァレラチーズのバイブ使っても、感じるとこは、オナニ」
まあそうだね。

「ミスターミルクバーが、奥さんヤリまくっても、やっぱりダンナはカンカン」
まあそうだね。

「四十八手をマネシテモ、使用するカショは、アソコとアレ」
露骨だけど、まあそうだね。