コトバのコトバ

芸術も、選ばれてナンボ。

ゴッホがほんとうに、世間の承諾も賛同も必要としていなかったかはさておき、仮にそうだとして、そんな孤高の生涯だとしても、最終的には承諾されてしまったのだ。選ばれてしまったのだ。だから芸術史に名前が刻まれているのだ。価値があって選ばれたというよりも、選ばれたから価値が生じたのではないか。

ゴッホ本人が、選ばれたかったか、そうじゃなかったかという彼個人の考えは、ここでは重要ではない。芸術史に芸術として残るものは、ほくらが芸術作品と呼ぶものは、すべて選ばれてそこにあるのだ。つまり選ばれなければ、芸術という名前すら与えられない。

選ばれることによって、芸術史に名前を刻んでいるのは、ゴッホだけではもちろんない。ビートルズだって芥川龍之介だって、あるとき選ばれていなければ、不動の歴史的地位も、望みようもなかった。

つまり、芸術も、選ばれてナンボ。

 

『案本』から。