コトバのコトバ

ボクキキⅩⅡ最終編3:衝撃の真実。

こういうのを死闘と呼ぶんだろうか?
たいした修羅場も踏んでないぼくにはわからない。
でも、さすが、12人の最後に登場するだけのことはある。「とも」と読む強敵だった。

全身に力が入らない。トライアスロンでゴールしたあとに、オナニーしたくらい疲れている。もちろん、トライアスロンなんて、やったこともない。ぼくのイメージで「めちゃすごく」を言い換えたに過ぎない。ただ疲れが、どぼどぼとカラダからこぼれている。

おなかすいたなあ、お寿司食べそこねちゃったなあ。大好き→1位ねぎとろ、2位カニサラダ軍艦、3位のタマゴ焼き、4位の・・・と考えながら、服を着ていると、グ~っておなかが鳴った。

「・・・ヒトミ」

元オネーサンが目を開けた。おなかのグ~で起こしちゃったかな、ごめんなさい。それにしてもだいじょうぶかな?めちゃすごく苦しそうだ。
友情か、もしかしたらそれ以上のものが、胸をよぎる。ふしぎだな。この人のせいで散々な目にあってきたのに、すべてを許せている自分がいる。
今日はふしぎな感覚デーだ、いや夜だからふしぎな感覚ナイトだ、って完璧にどっちでもいい。たぶんこういうの、愛憎って言うんだ。火曜サスペンスで見たことがある。

「・・・おめでとう」
スタンプカード!最後のひとつが、あざやかな朱色で押されている。
やったあああああああーーーーーーーーーあ!スタンプが12個、ついについについに!
あれ、元オネーサン、これまで見せたことがないような、慈愛に満ちた笑顔。

「大きくなったね、ヒトミ」
大きくなった?ピエールのこと?←まっ先に、こう考えるクセがついている。

「わたしの、誇り」
わたしの?誇り?ぼくは、元オネーサンのなに?

こればかりはいつものように、ぼくの疑問にはもちろん答えないで、満足したようにゆっくり目を閉じた。それにあわせるように、天井の照明がおちた。再び、暗闇のブドーカン。

いきなり始まるピアノ曲のイントロ・・・これは「冬のソナタ」?いったい、なにが始まるのだ?しばらく続く音楽、「あの曲」とは微妙にちがう。。。たぶん著作権の関係で、似せてつくった曲だ。そんなことどうでもいい。そして、ぼくの10メートルくらい先に、天井からのピンスポットライト。その中に姿を現した、一人の・・・一人の・・・やったやったやったやったぁーー!

「おかあさん!」

「元どおり、元気になったんだね、もうケガは、だいじょうぶなんだね、またいっしょに暮らせるんだね、ぼく、ぼく、ぼく・・・(涙)」
おかあさんは、事故の前とおなじ、やさしい笑顔でうなずいている。
「どこの悪魔さんかなんか知らないけど、あの約束、いまこの瞬間まで、半信半疑だった。ありがとう。約束守ってくれて、ありがとう」ぼくは、暗闇の中めがけて、声を張りあげた。

そして、驚愕のエンディングが、はじまった。

「その人は、最初からケガなどしておらーん」
太い男の声が、ホールにこだました。
ぷぁぱっぱらぱぱっぱぱぱぱらっぱらぱっぱらっぱぱっぱらぱっぱっぷぁっぱーーー。
もったいぶったファンファーレが、鳴り響く。これまで電気代ケチっててごめんねー、ってくらいのあふれる光の中、紋付はかまのオジサンが、ステージの上に現れた。

「クルマにはねられてもいないし、入院もしていない」
じゃ、あの、面会謝絶の部屋は、なんだったんだ?

「そもそも、あの病院自体、存在していない」
えっ、それどういうこと?否定形の多いオジサンだな。

「しかもその人は、オマエのおかあさんではない!」
なんだ、このオヤジ、わけがわからない、この人がぼくのおかあさんじゃなければ、なんなんだ?このバカオヤジ!って、ふとおかあさんを見ると、しくしく泣いている、肯定するように。どうしたの、おかあさん、違うって言ってよ。

「あと、男はやたらと泣いちゃダメだ」
、、、すみません、気をつけます、でもなんで知らないオジサンから説教・・・@深夜のブドーカン。

「さらに、わたしは悪魔さんではなーい」
じゃ誰?誰でもいいけど。

「オマエの父だ」
チチって、どっちの乳だよ(←まっ先にこう考えるクセリターンズ)って、チチ、ちち、父ィーーーーー?!おとうさん。。。

そして、「わたしが、おかあさんよ」。(自称)父の隣の人は、泣いている。
おかあさん(復活)と、おとうさん(主張)と、おかあさん(主張)。なにがなにやら。

「ある重大な事情があって、わたしたちは、オマエと別れなければならなかった。ヒトミ2歳のとき」2歳・・・あの子供?フレディから伝わってきた、あの映像の中のぼく?

「わたしたちは、たいせつなオマエを、そこにいる女性に託した」
おかあさんを、指差してる。あの映像の中のおかあさん・・・覚悟をきめた顔をしていた。
「つまりこの二人の女性は、生みの親と、育ての親。ふつうの人の2倍だぞ、ツイてるな、ヒトミ」

ぼくは、気になることを質問してみた。「あの別れのシーンにいた、ぼく以外のもう一人の男の子は、だれですか?」
「それは、ヒロミ。オマエが『キツネ』と呼んでいた人だ」

そこであらたな、ピンスポットライト。その光の中には、もちろんキツネのオネーサン。
「そして、オマエの実の兄だ」

なにいいいいいいいいぃーー兄アニあにいいいいいいいいいぃーーーーーぃーぃーぃー!
オネーサン→オニーサン、にっこりウインクして、「ヒトミ、気持ちよかったよ、また遊ぼうね」
遊ばない遊ばない。

、、、、、脳が、ミートソースになった感じ、しかも缶詰の。なにがなにやらわかりません。

まだ無邪気に、おとうさん、とは呼べないから→おとうさん(仮)が、2歳のぼくを手放すこととなった「重大な事情」を語りはじめた。

姉小路家は、平安時代から続く名家で、おとうさん(仮)で、35代目になる。しかしそ
の家系には、これまた平安時代から続く大問題があって、満22歳になると性の転換が起きるのだ。つまり、男は女に、女は男に。なんの前ぶれもなく、突然、断りもなく、うむを言わせず、例外なく。

「まあ、自分が納得すりゃ、どっちでもいいんだよ、男でも女でも。私のときは、気にならなかったし、むしろ2倍楽しいし」おとうさん(仮)、ライトめに、ニコニコ笑っている。しょうゆラーメン頼んだのに、塩ラーメンが出て来た、でもそれがおいしかった、くらいライトな感じ、って、ヒトミくん、たとえ話考えている場合ではない。

そうなのかな、そうなんだろうな、そうならいいけどな、ぼくもそうなっちゃうのかな。

「だから、うちの家族は、みんな、男女どちらでも使える名前になっている」
ヒトミ、ヒロミ、おとうさん(仮)、「わたしは、カオル」、おかあさん(仮)、「わたしは、マサミ」。

「でも、難関は結婚。家系を絶やすわけにはいかないし、そうなると、子供もつくらなきゃならない。名家だけに、ばかばかしい世間体もある。男から女に変わったら、そんじゃ相手は男ねー、ってわけにはいかない。男と男じゃ、子供がつくれない」
なるほど。

「とは言え、女になったら、女の人と結婚するとヘンだろう?だから相手は、やっぱり同じように、男女が入れかわる人じゃなければならない。そんな家系が、日本中にかろうじて17家残っている。その中で、なんとか、結婚したい人を見つけなければならない、無理にでも、妥協しても、好みじゃなくっても、年が離れていても。サンプル数が少ないからねー、なかなか思うようにはねー」
たしかに、タイヘンそうだ。

「ま、わたしとおかあさんは、運命のエンドレスラブだけどね」と言って、ぶちゅううう、と、おとうさん(仮)とおかあさん(仮)、DEEP<DEEPER<DEEPESTキス。

仲いいんですね、なによりです、お好きなように、はいはい。。。おい、ちょっと待てよ、、、満22歳で男女入れかわるんですよね、入れかわった同士結ばれるんですよね・・・?

「つまり」
おとうさん(仮)が、晩ごはんのメニューを、明かすように言った。
「そう、わたしがほんとうのおかあさん」
そして、おかあさん(仮)、「わたしがほんとは、おとうさん」

、、、あたマがこワれますタでス。

おかあさん→育てのおかあさん
ほんとうのおかあさん→おとうさん
おとうさん→ほんとのほんとのおかあさん

「まあ、気にするなって」
気にする、する、するよーーー。
「だからね、こんなややこしいことは、自分の代で終わりにしようって、決めたんだ。ヒロミは、ちょっと、間にあわなかったけどね」
「わたしはこれで、幸せよ」
ヒロミ、、、兄さん。。。

「ヒトミからは、なんとかしなきゃなって、思ったんだ」
ありがとうございます、かな?
「中学生の頃までは、まだそんなにあせってはいなかった。ヒトミは、毎日ちゃんとオナニーできるいい子だったからね」
(赤面)見てたんですか?

「ところが、中3の秋くらいかな、ヒトミが急に女の子たちに、距離を置きはじめた。思春期って、そういうもんだけど、なにぶん宿命が宿命、とくにわたしたちは異性にオクテなんだよなー。だからしっかりウォッチしておかなきゃ、って、大急ぎで高校をつくった」
つくったぁ?

「高校創立って、たいへんなんだよね、しかも半年で、お金もかかっちゃうし」
ぼくの通ってた桃高は新設校で、ぼくは、願書も出してないのに、いきなり推薦合格しちゃったんだ。・・・そういうカラクリがあったとは・・・。

「まずは男らしくと、サッカー部に入らせて」
サッカーなんて興味なかったけど、「いいから入ろうぜ」って、イシダが言ったから・・・イシダ?
「なんとか性に関心を持たせようと、世界各国オールジャンルのエロ本読ませたり」
毎日、コウノが見せに来てた。・・・コウノ。。。

「でも、オクテの血には、逆らえず、いまひとつ効果がない。だから、オマエを海外に行かせて時間かせぎをして」
(大学なんかつまらないぜ)、、、トモハラがぼくに言ってた。
(海外で武者修行なんて、いいんじゃないかな)、、、オオシマ先生!

「いろいろと準備を、整えたのだ」
「じゃ、学校のみんなは・・・」
「ほぼ、エキストラ、って言うか、ダミー、かな」
、、、ダミーの、友達、、、だみーの、先生。。。

「そして、このストーリーを思いついたのだ。我ながら、ナイスプランニング!だよね?」隣の、おかあさん(仮)と、満足げに笑いあってる。

このストーリーって、「例の女」のことか?友達って、なんだ?なにがほんとで、なにがうそだ?なにから、どう、質問していいかわからない。過去も未来も、もう信じられない。たしかだと思ってた過去も、そうじゃなく、ただでさえあいまいだった未来は、まったく見えなくなってしまった。
たぶんすべて、ぼくのためだ、たぶん。そのすばらしいストーリーを、ぼくだけが聞かされていなかった、それだけのことだ。善意と思いやりのパーティーの、すてきなプレゼント。その前に、目隠しされてぼくがつれてこられた。それだけのことだ。

「フザっ、フザっ、フザケルナー!!!!!!」

生まれはじめて、こんな大声を出した。のどが口から飛び出るか、と思った。
おとうさん(仮)は、おかあさん(仮)の後ろに、隠れた。
ブドーカンは、完全に沈黙した。みんな、心臓の鼓動まで、止めているかのようだった。

「怒っちゃダメ、ヒトミくん」
ぼくの右手前方の花道(いつのまにそんなもの?)の上に、また一人あたらしい女の人・・・

ツバサさん!
「学校の友達も、先生も、ダミーだったかも知れない。わたしも、その一人かも知れない。でも、ダミーにもココロはあるの、涙も出るの、叩けば痛いの、触れば濡れるの。みんなみんな、ほんとうの真心で、ヒトミくんと付きあってきたのよ」
そうかもな・・・。真心まで疑っちゃ、いけないのかも知れないな。

「『例の女』の最初の女に、まっ先に手を上げたのは、わたし。ヒトミくんの一番だけは、だれにも譲りたくなかった」
そう言ってもらえると、うれしいです。思いだしダチ、します。

「出会いかたなんて、星の数ある。席が隣になった。相手の定期券を拾った。おなじ刑務所に入っていた。ヒトミくんとわたしは、初めはたまたま、こんなストーリーの中で出会ったけど、出会い方が、そうだっただけ、じゃない?そこから先は、わたしたち二人がつくりあげたもの、じゃない?」
ツバサさんに言われると、そんな気がしてきた。ぼくは、ぼくは、ぼくは・・・。

「もう、女の人は、怖くないはずよ」
もう怖くない、どころか、、、好きだ。でも、いちども出してない。←しつこい。

「ヒトミくん、忘れてるみたいだけど、おめでとう」
おめでとう?あったっけ、おめでたいこと、、、あ、そうだ!
「今日はお誕生日でしょ?おめでとう」
そうだ、ぼくの22歳の誕生日、いろいろあったから忘れてた・・・満22歳!
「そう、あなたは自分のちからで、自分の運命を変えたの。もういちど、おめでとう」
ありがとう、でも、ぼく一人のちからじゃないよ。
「もう、いろんなこと、自分でできるはずよ」
ちょっとだけど、ちょっとずつ、だけど。
「わたしが、最初に、教えたの」
教訓①「考えるな、カラダに聞け」
ツバサさん、得意そうに、微笑んだ。ぼくの大好きな、あの顔だ。

「でも、ヒトミくんがしてきたことは、自分のためだけじゃないの」

ツバサさんの隣に、また一人・・・アユ!
「ヒトミくんは、わたしのコンプレックスを、取り去ってくれた」
アユは容姿に、自信がなかった。でも、ぼくは彼女の、セックスのときの顔を、とってもきれいだと思った。悪い方から見ると、誰だってブサイクだ。いい方から見ると、誰だってチャーミングだ。だったら、いつもいい方から、見ればいい。

教訓②「女の顔は、ひとつじゃない」
「わたしに、生きていく可能性を教えてくれたの」
ありがとう、アユ、でも、そんなたいしたことしてないよ。ねえ、泣かないで、ぼくも泣くのをがまんするのに、いっぱいいっぱいなんだ。

「そう、ヒトミくんは、わたしの凍っていたこころを、溶かしてくれた」

レイカ!見ないうちに、表情がとてもおだやかになってる。レイカは、手強かったなぁ、機嫌の悪いアイドルなんて、ちょっとしたリーサルウェポンだ。

でも、教訓③「とにかく自分で動くのだ」
困難ほど、正面から当たれ、って教えてくれたのは、レイカだ、ありがとう。

「あなたには、人を癒すチカラがあるのよ、男でも女でも」

お久しぶりです、モモコさん!
「いまはもうそれに、気がついているわね?」
どうなんだろう、自分ではよくわからない・・・。
「返事しなさい!」
「はいっ」
モモコさんの、子供みたいな笑顔。
「最近、あたらしい恋をしているの。昨日の夜も、3ラウンド」
よかったですね、3発も!
「ちがうわよ、18×3=54ホール」
ゴルフですか!あと、、、ホールは、下品です。

教訓④「いつだって、いまが、いちばん」
ぼくも、いい恋ができるようにがんばります。モモコさん、ありがとうございました。

「こんにちは、ヒトミくん」

こんにちは、マチコ。今日は、シルビアじゃなくって、マチコだね。
「シルビアは、やめちゃったの、でも、女王様はたまにやってる。男の人が憎いって思わなくなったから、いまは、愛のムチ、むしろ本気、だけどね。こっちのほうが痛いよー、試してみる?」
遠慮しとくよ、でも、明るくなったね、うれしいよ。

教訓⑤「すべてを肯定してみよう」
これからもがんばろうぜ、マチコ、おたがいに。

「ヒトミくん、わたしたち覚えてるぅ~?」

ユミさんとマミさん、忘れるわけないじゃないですか。
「元気に浮気してしてますか?」、、、へんな質問。
「それがねー、もうすぐ浮気妻選手権の世界大会だから、その準備で浮気してるヒマなくて」と、ユミさん。難しいもんなんですね。「ヒトミくんも、早く彼女つくってね」と、マミさん。ありがとう。努力します。「そうしたら、ヒトミくんも浮気できるよ」そういう意味なんですか。
「ヒトミくん、ファンタジスタやカエルさんに、頼ってばかりじゃダメよ」耳が痛いです。

教訓⑥「人に頼るな」
「だから、ファンタジスタ、わたしにちょうだい!」「わたし、カエルさん!」
、、、あげませんよ。

「・・・ヒトミくん」

・・・ミカ。
「・・・隠してた・・・わたし・・・ごめんなさい」
もう、怒ってない、わかった、ほんとうにわかったよ。
「あん、なに、あんな、に、好き、だったのに、好きだっ、たのに・・・」
ミカ、もう泣かないで、好きな人にかくしごとをしなくちゃいけない、って、つらいよね、それがその人のためだって、せつないよね。ぼくが、ミカだったら、きっと、そうだ。

「・・・好きだった」
知ってるよ、だからもう、だいじょうぶ。
みんなの愛情で、友情で、見えないところで献身的に支えてくれた、たくさんの誰かのおかげで、ぼくはすこしだけ、やさしくなれた、泣かなくなった、きっと、それは、成長ってことだろう。ぜんぶ、すこしだけだけど、でも、明らかにちがう。ぼくのココロの中には、みんなへの感謝しかない。おかあさんの病院がにせものでも、ぼくの高校がつくりものでも、そんなことは、それだけのこと。だって、みんな、ここにいるじゃないか!だから、ミカ、もう泣かないで。

「ミカは、ひとつだけ大きな間違いをしている」
ミカが、泣くのをやめて、ぼくを見つめている。
「好きだった、って、過去形じゃないでしょ?」
ミカは、笑顔が涙でぐしゃぐしゃだ。
「ミカ、また、いつか、会えるよね」

教訓⑦「永遠なんて、ない」でも、未来は、ある。
ミカは、微笑んだ。そして、うなずいた。

「その節は、お世話になりました」

タマキさん、その後、いい出会いはありましたか?

教訓⑧「思い出は多いほうがいい」、増えました?
「好きな人ができたんだけど、ふられちゃった」
どうしてですか?
「彼、亡夫との3Pを嫌がったの」
そりゃふつう、よろこびませんよー。
「でも、わたし、もうだいじょうぶみたい。ヒトミくんが、前に向かって生きることを、思い出させてくれた。忘れられない、毎日にする。ほんとうに、ありがとう」
こちらこそです、ありがとうございました。

「ヒトミ、すてきナ、パーティーね」

ソフィア!わざわざ来てくれたんだ、遠いところ、ありがとう。
ソフィアには、とってもたいせつなことを、教えてもらったんだ。

教訓⑨「人は違う、だからわかりあいたい」
「ワタシ、もっと、ニホンのウタマルとわかりあいタイ。ヒトミとも、もう2,3パツ、わかりあいタイ」
、、、あのね、それじゃ、わかりあう=スルって意味でしょ?せっかく、たいせつなことって、言ったのに、それと、なんども言うけど、(誤)ウタマル→(正)ウタマロ、だからね。アンダスタン?ソフィアは、いたずらっぽく笑っているけれど。

「わたしの初めての男」

そう言われると、照れくさいよ、サクラコ。
「ヒトミくんに、文句を言いに来たの」
なに、こんどは真逆にいきなり。
「あれからわたし、だれともエッチしてないの。自分でも、してないの。現実でするより、想像のほうが気持ちよくなっちゃったの」

教訓⑩「想像力には、チカラがある」
「触らなくても、イッちゃうの。こういうのどう思う?これって、女の幸せ?」
、、、あ、それ、ちょっと、わからないな。。。
「責任とってよ、ヒトミくん」
いいよ、サクラコの想像の中でね。
「冗談、初めてが、ヒトミくんでよかった、感謝してます」
感謝するのは、ぼくのほう、ありがとうサクラコ。また、手をつないで、家に帰ろうな。

「、ってことなんだけどさ・・・黙ってたのは、悪かったと思う、でも」
「もういいよ、わかったよ、おとうさん」
おとうさん、って、やっと言えた。

ぼくは、ぼくは、ぼくは、ずっと、ずっと、ずっと会いたかったんだよ、おとうさん。
おとうさん!おとうさん!おとうさん!おとうさん!おとうさん!おとうさん!
なんどでも呼びたい、おとうさん!でもほんとは、おかあさん。。。

でもいいんだ、そのほうが、いいんだ。
おとうさん&おかあさん。おかあさん&おとうさん。そして、ぼくの大好きなおかあさん。
ほら、5人いる!ふつう、おとうさんとおかあさん、ふたりしかいないのに。2.5倍!きっと、愛情も、2.5倍。ありがとう、ぼくは幸せです。

「おとうさん、素朴な質問なんだけど」
「いいよ、なに?」
「さっき、お金もかかっちゃうし、って言ってたでしょ、どのくらい?」
「ヒトミは気にしなくていいよ」
「教えてよ、参考にするから」なんの参考だ?
「200億くらい、おこづかいなくなっちゃった」
2,2,2,200億!
「バイトしなきゃ」
どんなバイト?

「そんなことより、それで、オマエ、どうする?」
「どうする、って?」
「わたしたちは、オマエに、男として生きろ、と言ってるんじゃないよ。男でも女でも、どっちでもいい。ただ、自分の意思で、選んで欲しい。わたしたちは、そうじゃなかったから」
「ありがとう、わかりました。でも、もうちょっと、時間もらっていいかな、まだ混乱してるから」
「OK,もちろん、じっくり考えろ」
ありがとう、ほんとにありがとう、おとうさん。

「ヒトミ、元気でな、また会おう」
おとうさんも、お元気で。

「ヒトミ、また、会ってくれるよね」
あたりまえじゃない、おかあさん。ぼくら、家族だよ。

「恋せよ!愛せよ!生きろ!ヒトミ!」
おとうさんのその叫びとともに、すべての照明が落ちた。そして数10秒後、おだやかな暖色の光が、ホールに満ちた。映画やコンサートが終わったあと、「これをもちまして、レッド ホット チリペッパーズ 東京公演はすべて終了いたしました」、ってときの、照明だ。

あ、おかあさんがいた!いつもの、やさしい笑顔でぼくを見ている。

「おかあさん、なにか食べに行こうよ。ぼく、おなかすいたよ」