コトバのコトバ

ボクキキⅧ.ミカ編3:残酷な運命。

二人とも、いつでも準備OK(はぁはぁはぁはぁ)だったのだが、タイミング悪く週末の22時。どこも満室で、ようやく1部屋空いてたのが、「ホテル銀河鉄道69」。
キャッチフレーズは、「無重力?すぺーすせっくす大性交!」
目玉は、コンドーム使い放題と、ゆで卵食べ放題。
正直、気分は凹みました、二人とも、はい。しかし、ぼくのピエールは凹みませんでした。
で、レッツゴートゥザスペースセックス!って、結構、気に入ってる?

部屋に入ると、お約束どおりの、蛍光&夜光塗料の宇宙壁画。
でも、ぼくらには関係ない。宇宙でも、砂漠でも、オフィスでも、することはひとつ。

抱き合う二人。そして、熱く、長い、キス。
ぼく。「おお、これが、キスだ!」
ミカ。「そうよ、あなたのキスで、わたしの人生は始まった!」
ロミオ!ジュリエット!カンイチ!オミヤ!世紀(性器じゃなくって)の恋の、始まりだ。
終わりのない始まり、永遠の恋だ。

右の手、左の手。うわくちびる、したくちびる。そして、舌。
そのすべてが、単独の意思を持つように、自分のパートナーをまさぐり引き寄せあう。

二人の距離が、限りなく近くなる。
いきなり、ロマンチックな抱擁もそこそこに、彼女がぼくのからだを滑り降りてくる。
つまり、ピエールのところに!

喜びと、驚きと、失望が、7対2対1でブレンドされた複雑な気持ちで、成り行きを見守っていると、・・・やっぱり、ピエールはお口で捕獲されました。
これがまた、なんとも、気持ちいいのです。お上手な、テクなんです。
でも、気持ちよさが、また、悲しい。
ミカは、だれに教えてもらったんだろう。きっと、これまでの男にも、こうやってきたんだ。男たちはみんな、いまのぼくと同じ気持ちよさを、味わってきたんだ。
なんだよ。ぐすん。
恋の、痛さ、か。
恋を得た喜びは、やがて苦しみに変わるって、坂口安吾も書いてたしな。

でも、気持ちいいよ、うますぎるよ、ミカ。バカ。ミカ。

ぼくは、自分ですっぽんぽんになって、彼女をベッドに寝かせた。
彼女も、下着だけになっている。

「ぼくは、」
彼女のチクビを、右手の人差し指と中指の間にはさみながら言った。
「キミが初めての人だと、思いたい」
これは本心からだ。

いろんな女の人が、ぼくのところにやって来た。
魅力的な人ばかりだったし、学ぶことも多かった。でも、ぼくが選んだ人じゃない。

ぼくは、ミカを選んだ。1億何千万の中から、ミカを選んだ。
自分から誘った(断られ続けたけど)。好きだって、言えた(さき越されたけど)。
こんなに意思をはっきりさせたなんて、初めてだ。
だから、彼女が、初めて。そう、思っている。

でもミカは、目をエッチにトロンとさせながら、首を振った。
「わたしは、いまのヒトミくんが好き。これまでのヒトミくんもぜんぶ含めて、いまのヒトミくんが好き。一部じゃないの、ぜんぶ好き」
、、、やられた、ヒトミ、負けてるじゃん。
ぼくは、人間の、男の、ケツの穴のちっこさを恥じる。最後のは見たことないけど。

ありがとう、わかったよ。ふっきれた。過去も未来も、もうどうでもいい。ぼくは、ミカが好き、ただそれだけ、ほんとうにそれだけ、あとはいま、二人ひとつになるだけ。

ハダカになった彼女は、あどけない少女っぽさも、脱ぎ去っていた。

好き、という気持ちをセックスに表現すると、この激しさになるのだろう。ぼくのからだを、むさぼるように求めてくる。以前のぼくなら、そんな女性の変貌にビビッてしまってたんだろうが、ぼくはもう半年前のヒトミではない。
彼女の欲望を真正面から受け入れ、ぼくも硬く大きく膨らんだ欲望をぶつける。
セックスは、コミュニケーション。求め、求められて、ふたつはひとつに。
キミに、チェックイン。

ピエールを深く押し入れると、彼女のラズベリーが抱きしめるように包み込む。
そのチカラで、その熱で、彼女の気持ちが手に取るようにわかる。どれだけぼくを求めているか、どれだけぼくを愛しているか。幸せの喜びに満ちて、そしてそれを失う恐怖に満ちている。

そう、恐怖・・・。

彼女がイクか、ぼくがイクか。おかあさんをとるか、彼女が残るか。
どちらにしても、幸せなだけのストーリーは、もう綴れない。

なーんて、あたまの中はブルーでも、
カラダはチョーーーーー気持ちいいから困ったもんだ。
そうだ、こういうときは、「参照→教訓①考えるな、カラダに聞け」だ。
カラダに聞いた。答えは、動け、だ。

そう言うわなあ、カラダだもん。やっぱりカラダは、快楽主義者!わかった、動こう。
あたまの中のブルーが、真っ白になるまで。

彼女、ぼくの上に乗ってきた。
そして、ピエールを包み込んだまま、激しく腰をシェイクする。
長い髪を、振り乱しながら、自分で自分の「意外とええ乳」をわしづかみにしながら、あえぎ声もフルボリュームで。大胆。濃厚。発情。やっぱり、ぼくより上級者かも・・・。
って、どうもそういうことじゃないぞ、ヒトミ!

ミカが、激しく腰をシェイクし始めたのは、彼女は、自力でイコうとしている。
ぼくを、これ以上悩ませないために、苦しませないために。
さきにイッて、自分から、身を引く覚悟を決めたんだ。彼女の悲壮な決意が、伝わってくる。

(おかあさんを、助けてあげて。あなたに会えてよかった。わたしのことは、忘れないでね)

イヤだイヤだイヤだイヤだ!どこにも行かないで!どこへも行かせるもんか!

ぼくは、腰の動きをフルスロットルで、加速させた。彼女に追いつくように。
彼女を追い越すように。彼女よりも先にイクように。
おかあさん、ごめんなさい。
でも、わかってくれるよね。ぼくに、好きな人ができたんだ。
とってもとってもいいコなんだ。おかあさんは、喜んでくれるよね。

そういえば、セックスで、ちゃんと射精したこと、なかったな。
どんな感じな、んだ、ろ。本、かくてき、に、きもち、よく、な、ってきたぞ。
あと少し、あとすこしで、物語の結論が、ぴゅっと出る。

さあー、ぼくがイクよ。これで、もう、二人を引き離すものはない。
ミカと目が合った。やさしい微笑が、うなずいている。

や否や、その微笑を凍らせて、気絶してぼくに覆いかぶさるミカ・・・イッてる。。。

突然のことに大混乱のぼく。視界に、例のオネーサン、手には、バイブ。

アイツ、なにやったんだ!キツネ、ぼくのミカになにしたんだ!

どうやら後ろから、バイブを、ミカのオシリに突っ込んだんだ。
その刺激で、ミカが、いっきに境界を越えてしまったんだ。

「なんてことしてくれるんだあああ!」
泣きわめきながら抗議するぼくを無視するように、スタンプカードを投げてよこす。

そしてこっちを、見た。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

泣いている、なんで?

そしてキツネはミカを肩にかついで、部屋から出て行った。
ぼくは、ただ、ベッドに座り込んでいた。

教訓⑥「永遠なんて、ない」