コトバのコトバ

ボクキキⅣレイカ編2:レイカの本心。

彼女は、大きな目を、瞳がまぶたからこぼれおちそうなくらい思いっきり見開いて、
ぼくをにらみつけている。

「ごめんなさいっ」
大慌てでドアを閉めたけど、嵐の予感、人類史上最大規模。
でも、(毛、見ちゃった)ムフフフフ。

「ちょっとあんたぁ!」
ほら、来ました
「レイカ様になにしたのよぉぉぉ!?」キツツキが、くちばしをとがらせている。
連行されたところは、もちろんレイカ様の控え室。
中に入ると、すでに嵐のあと。「ネギ騒動」の結果だ。

部屋中にイスが散乱し、テーブルの脚は重いローキックを一発食らったように、
見事に折れていて、ぼくが運んできたプラズマテレビには、
お昼のお弁当らしきものが激突している。
死体を運び出したあとの殺人事件現場、って印象。

「レイカ様、連れてまいりましたわ、このクソガキ、レイカ様になにを、」
としゃべり始めたキツツキのくちばしを、
「あなたはいいから、出てって」と折り、ぼくをあの目でにらみつけた。

「もちろんですわ。ほほほ」と部屋を出て行くキツツキの口が、
(BITCH!)
って動いたのを、ぼくは見逃さなかった。

ところで、これから、ぼくは?

「あんたねぇ、」
来た。
「見たでしょ?」
、、、見たけど、、、。
「わたしのトイレあけて、ただで済むと思ってるの?」
だってそっちがカギかけてないから、って言っても、ただで済まないんだろうなぁ。

「なに見た?」
「・・・見てません」
「ウソついたら、舌抜くよ」
やりかねない。
「・・・毛」

彼女、いっきに真っ赤になって、
「なんで、そんなこと言うの!」って怒鳴った。
「だって、ウソついたら舌抜くって、、、」

レイカ様、このアホ相手にもうやってられまへん、って感じで
「わたしをだれだかわかってるの?」
「レイカ様でしょ」
「様はいいよ」
「だって、みんなそう呼んでるけど」
「みんなそうやって、わたしをバカにしているの」
?様、なのに?
「陰でなんて呼んでるか、知ってる?」
知ってる。“BITCH”でしょ。
でも言えないな。

「鬼姫よ」
そんなバージョンもあるんだ。
「ひどくない?」
、、、そう、かな。
「みんな、裏と表。わたしに見せるほうが裏で、見せてないほうが表」
そう、だね。。。

ふと浮かべる顔は、寂しそうだ。
彼女こそ、ほんとうはこっちが表なのかも。

「ところで、」
またいつもの顔に、逆戻り。
「あなた、ほんとうにわたしのこと知らないの?」
「見たこと、あるような、ないような、、、」
「家にテレビないの?」
「あるけど、バイトが忙しくって」

腕を組んで、ああなんでこんなバカがうちのクラスに来たんだろ?と嘆く女教師のように「わたしは、レ・イ・カ。もう覚えたわね」と言った、というより、叱った。

レイカは20歳、ぼくの1コ下、だそうだ。怒っているときは、年上に見えたけど、そうじゃないときは、すこしあどけない。

むせかえるような匂いに部屋を見渡すと、1分で花粉症になれるくらいの花束。
でも、ぜんぶ花びらのところで、折られている。
ひどい。

「これ、きみがやったの?」
くちびるを固く結んで、黙っている。
「よくないよ、こういうの」ぼくが言ったら、
「だって、ぜんぶニセモノじゃん!」と絶叫。
そして、静かに話し始めた。

「花をあげるって、どんな気持ちだと思う?」
好き、とか、おめでとう、とか、がんばって、とか。
「ここにあるたくさんの花束から、どんな気持ちを感じる?」
・・・なにも、感じない、、、なにも。
「ねっ、ニセモノ、でしょ?」
レイカはかなしそうに同意を求めた。
「そうだね」
ぼくは、うなずいた。

「気持ちのない花束って、生ゴミだな」って、ぼくがポツリともらしたら、
レイカは初めて、クスッと笑ってくれた。
驚くほど、チャーミングな笑顔だった。

「きみ、かわいいね」って、思わず言っちゃった。
かわいいのはあたりまえでしょ!って、また怒られるかなと首をすくめたら、
レイカ、床に落ちたバラの花くらい、真っ赤になった。

「ねえ、わたしが怖くないの?」
「そりゃ怖いよ、いつ怒られるか、わからないもん」
「そういうことじゃなくて」
ん?

「わたしが、有名なアイドルだということ」
アイドルって、怖いものなのか?

「誰もが、腫れものに触るように扱うわ」
様つけて呼んでみたり、か。

「デビューしたのは、3年前。その頃は、わたしもまわりも、こうじゃなかった。
芸能界なんて、右も左もわからないことだらけだったから、教わると、ハイっ!って。

デビューのときのキャッチフレーズが、氷の微笑女、よ。げげげ、よ。
クールな微笑み、召し上がれ、よ。げげげげ、よ。でも、そのころはガマンできたんだよ。

わたしが売れてくると、わがままが許されるようになる。
こうしたい、って言うと、5秒でそうなる。
イヤっていうと、みんなわたしの機嫌をとろうと必死
あの人嫌い、っていうと、つぎの日には、その人はもういない。すごいでしょ?」

(・・・・・)

「でも、みんなが怖いのは、わたしじゃない。わたしが働かなくなること。
わたしは、とってもお金になるから。それがわかるから、いつも大声出して、困らせてやるの」
ぼくには、その彼女の上げる声が、悲鳴に思えた。

「花と気持ちと、ほんとうに欲しいのは、どっちだと思う」
うん、ぼくにも、わかるよ。

「でも、レイカには気持ちなんかいらないよ、って思われてるみたい。
わたしはお人形だから。逆らうとたたられる、呪いの人形だから」
でもぼくには、人形には見えないなあ。

だって、さっき彼女の「毛」を見たとき、ぼくのピエールは、直立不動だったから。
人形じゃ、タタないもん。・・・とは言わなかったけど。

「ところで、ヒトミくん」
ぼく、名前教えたっけ?
「きみ、わたしのこと、濡らせる?」
濡らせるって、、、?

「アソコを、ぐじゅぐじゅのべとべとのぐちょんぐちょんにできる?って聞いてるの」
そんな顔で、そんなこと、言わないでよー。
こんどはぼくの顔が、バラ色になる番だ。。。って、まさか!?

「そう、わたしは、例の女」
それ、早く言ってよぉ。